抗インフルエンザの予防投与について。あなたに近い人がインフルエンザになったときの対応をまとめてみた
毎年1-2月はインフルエンザが流行します。
小学校の学級閉鎖、職場の同僚の感染者、老人保健施設での集団感染などがあります。
この時期はたびたびニュースになることも多いです。
家族など生活圏の近い人がインフルエンザに罹患した場合、高齢者や子供が近くにいる場合など、抗インフルエンザ薬を使った人がいいのはどういう人なのか、をまとめてみました。
今後の抗インフルエンザ薬を使用する参考になればい幸いです。
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抗インフルエンザ薬は医薬品です。インフルエンザの罹患時、または薬物療法をお考えの時には、お一人で判断せずに、必ずかかりつけの医師や専門の医師と相談をしてください。
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1 抗インフルエンザ薬は5種類(2019年2月時点)
1-1 治療に使われるものは5種類
2019年2月現在で世界で販売されている抗インフルエンザ薬は5種類あります。
- タミフル🄬 内服薬 (中外製薬)
- リレンザ🄬 吸入薬 (グラクソ・スミスクライン株式会社)
- イナビル🄬 吸入薬 (第一三共株式会社)
- ラピアクタ🄬 点滴製剤 (塩野義製薬)
- ゾフルーザ🄬 内服薬 (塩野義製薬)
1-2 インフルエンザに罹患しても、必ず抗インフルエンザ薬が使われるわけではない
インフルエンザに罹患した場合、抗インフルエンザ薬の処方を希望します。
ただ、抗インフルエンザ薬も薬です。薬には必ず副作用のリスクが存在します。
有名になった異常行動については後述しますが、
他にも
ショック、アナフィラキシー
気管支攣縮、呼吸困難
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
など命に関わりうる重大な副作用が起こる可能性はあるということは知っておいたほうがいいかもしれません。
そのため、添付文書の最初のほうには、以下の警告が記載されています
本剤の投与にあたっては,本剤の必要性を慎重に検討すること。
治療に用いる場合は、抗ウイルス薬の投与が全てのA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療に必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。
インフルエンザに罹患したとしても、必ずしも抗インフルエンザ薬が出るとは限らないことを知っておいたほうがよさそうです。
困ったことが起きた際に相談できる専門家がいないというのはとても危ないことです。
インフルエンザに罹患した(罹患したと思ったとき)は、自己判断をせず、必ず医師に相談することが大切です。
1-3 予防について記載されているものは3種類
5種類の抗インフルエンザ薬の中で、予防等について記載してあるのは3種類あります。
- タミフル🄬 内服薬 (中外製薬)
- リレンザ🄬 吸入薬 (グラクソ・スミスクライン株式会社)
- イナビル🄬 吸入薬 (第一三共株式会社)
治療投与と予防投与で使用方法が異なるものがあります。
処方された際には、必ず用法・用量について確認するようにしましょう。
2 抗インフルエンザ薬の予防投与の対象者
2-1 どんな人が予防投与の対象になるの?
予防投与の対象者について、添付文書には以下のように書いてあります。
予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
(1) 高齢者(65歳以上)
(2) 慢性呼吸器疾患、または慢性心疾患患者
(3) 代謝性疾患患者(糖尿病等)
(4) 腎機能障害患者
難しい書き方がしてありますが、
1、インフルエンザウイルス感染者と一緒に生活していて、かつ
2、高齢者、もしくは特定の持病を持っている人
が対象になることがわかります。
特に持病のない成人や、子供などは対象にならないことがわかりますね。
2-2 抗インフルエンザ薬と子供の異常行動の関係
基本的には子供は予防投与の対象者とならないことがわかりました。
ところで、一時期有名になった異常行動についてはどうでしょうか。
添付文書には以下の記載があります。
重要な基本的注意
抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている(「重大な副作用」の項参照)。
異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。
重大な副作用
異常行動
因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)(0.06%)があらわれることがある(「重要な基本的注意」参照)。
色々と書いてありますが
異常行動と抗インフルエンザ薬は関係は、有るのか無いのかはっきりしていない。そもそもインフルエンザの影響で異常行動が出ている可能性もあるということも予測されます。
異常行動が起きる可能性が高いのは、特に発熱後2日以内ということなので、特にその期間は保護者が十分に注意しないといけない期間のようです。
余談ですが、私の子供がインフルエンザに罹患した際にも、小児科の先生から異常行動の可能性があるので、目を離さないよう注意するよう説明を受けました。
ふとした隙に子供が思わぬケガを負う可能性があるというのはとても怖いですね。
2-3 妊婦さん・授乳婦さんはどうする?
添付文書に記載してある内容と、日本産婦人科学会・日本小児科学会の発表している対応策に差があります。
添付文書では、以下の通りです。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]
2.授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。[ヒト母乳中へ移行することが報告されている。]
となっています。
妊婦さんについては、厚生労働省のwebsiteに、日本産婦人科学会が提供した資料があります。
抗インフルエンザウイルス薬投与時の妊婦の安全性について -厚生労働省(2011年)
調査対象者は
2009年10月以降にインフルエンザに罹患した妊婦及びインフルエンザ薬を予防投与された妊婦を対象とした。
結論としては、
妊娠中に抗インフルエンザ薬の投与を受けた859例について予後を解析した。タミフル投与が778例、リレンザ投与が77例、併用が4例であった。タミフル投与例、リレンザ投与例とも流産、死産、早産、低出生体重児、胎児発育不全児を増加させず、また妊娠初期の薬剤投与によっても新形態異常やその他の形態以上リスクは特段に増加させなかった。妊娠中期、後期にタミフルもしくはリレンザを投与しても、現在のところ重大な問題点は指摘されなかった。
このため現時点では、妊婦インフルエンザ感染例に対するタミフル投与、リレンザ吸入については特に制限を必要とする副作用は認めれず、投与の有益性が危険性を上回ると結論する。
となっています。
結論からは治療投与は勧めていますが、予防投与については記載がありません。
予防投与も大丈夫なのかもしれませんが、薬には副作用の可能性があります。インフルエンザに罹患した際には、すぐにかかりつけの産婦人科医に相談し、予防投与を受けたほうがいいのかを相談することが大切です。
授乳婦さんについて
ヒト母乳中へ移行することが報告されていますので、授乳中の方に投与する場合には授乳はお勧めできません。授乳の再開時期については、明確なデータはありません。乳汁濃度が血中濃度とほぼ同様な推移で消失するとすれば、血中からは、投与終了2日(48時間)後にほぼ消失するため、母乳の消失も同様であると考えられます。具体的なデータがありませんので、最終的には先生と患者さんで相談の上、判断していただいてください。なお、日本小児科学会および日本新生児成育医学会からのインフルエンザにおける新生児への対応案(2017年9月20日改訂)には以下の記載があります。
インフルエンザにおける新生児への対応案(2017年9月20日改訂、日本小児科学会・日本新生児成育医学会)1)
C.母乳の取り扱いおよび母子接触について
原則、母乳栄養を行う。原則、飛沫・接触感染予防策の解除は,母親のインフルエンザ発症後7日以降に行う。母親がインフルエンザを発症し重症でケア不能な場合には、搾母乳を健康な第3者に与えてもらう。母親が児をケア可能な状況であれば、マスク着用・清潔ガウン着用としっかりした手洗いを厳守すれば(飛沫・接触感染予防策)、直接母乳を与えても良い。母親が抗インフルエンザ薬の投与を受けている期間でも母乳を与えても良いが、搾母乳とするか、直接母乳とするかは、飛沫感染の可能性を考慮し発症している母親の状態により判断する。
とあります。
授乳婦さんについては、母乳に薬効成分が移行する可能性があること。
他にも、赤ちゃん(特に新生児に)感染することを考慮して、治療方針を検討する必要がありそうです。
インフルエンザに罹患した時には、おひとりで判断せず、かかりつけの小児科や産婦人科の医師と相談して治療を進めていくことが大切です。
3 まとめ
抗インフルエンザ薬は医薬品です。
インフルエンザ罹患時には行動異常が起こる可能性があるほか、薬のよる副作用の可能性などもあります。
インフルエンザにかかったかな?と思ったとき、治療・予防をする際には、医師とよく相談することが大切です。
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参考:
抗インフルエンザウイルス薬投与時の妊婦の安全性について -厚生労働省(2011年)
日本小児科学会.日本新生児成育医学会.インフルエンザにおける新生児への対応案